浴衣

 白地に藤色の流線模様と銀鱗の鯉、舞い散る紫紺の花びら。華やかだが、少し安っぽくて品がない。
 土曜の夜、ネットショップから届いた浴衣をリビングのローテーブルに広げ、俺は満足の笑みを浮かべていた。
「これは女物か?」
 シャワーを終えた御堂が髪を拭きながら側に来て呟く。
「いいえ、違います。羽織ってください、御堂さん」
「何故、私が……女物でないとしても嫌だ」
 御堂は後退りをして首を振った。
「浴衣は伝統的な柄がいい。どこで買ったのか知らないが、これは派手すぎる。言ってくれれば馴染みの呉服屋で作らせたのに……もちろん、君の分もだ」
「今はこういうのが流行ってるんですよ」
 俺が浴衣を手にすると御堂は更に後退った。
「御堂さん、とにかく、羽織って見せてください。どうしても気に入らないなら処分しますから」
「…………」
 しかめっ面の御堂に浴衣を差し出すと渋々といった体で受け取った。御堂は暫く手にした浴衣をくるくる回して眺めたり、こちらを窺ったりしていたが、笑顔で促すとようやく肩からバスローブを落として素肌に浴衣を纏った。
「やはりこの柄は私には……」
 浴衣の合わせ部分を引っ張って、柄を見ながら俯く御堂の頬が紅を刷いたように染まっている。
 思った通り、派手な浴衣の御堂はどこか痛々しくて艶っぽい。いや、思った以上だ。白い生地から薄っすらと透けて見える湯上りの上気した肌と鮮やかな模様のコントラストが眩しくて淫ら過ぎる。
「佐伯っ!」
 想像以上の色香に堪らなくなった俺がソファーに押し倒すと、御堂は激しく身悶えた。
「いきなり何をする!よせ!」
 抗う両手を容易く捉えて押さえつける。御堂の身体が俺の下で逃れようとうねった。
 背けた顔を追い、怯えた眼に視線を合わせてやると御堂は瞳に懇願の色を浮かべて自らの唇を舐める。無意識にキスをねだるその仕草に愛おしさが込み上げ、俺は誘われるまま唇を重ねた。
「この浴衣はプレイ用に買ったんですよ。とても素敵だ。御堂」
「褒められても嬉しくないぞ。それにどんなプレイだ?」
「酷いことはしませんよ」
 下唇を吸い上げてやると御堂の身体から力が抜けて、手足が柔らかく俺に絡みつく。
「佐伯……佐伯……」
「なんですか」
「今度、一緒に、呉服屋に行こう。私が、君に一級品の浴衣を買ってやる」
「それは楽しみだ」
「んんっ……ふ」
「御堂……」
 舌を絡めながら蕩けていく御堂を俺は満足げに眺めた。

浴衣だしエロを書こう!と意気込んだのですがキスまでしか書けませんでした……orz
このあと佐伯は派手で安っぽい浴衣を身にまとい、汗と涙とよだれと精液とその他いろいろな粘液でぐちゃぐちゃになった御堂さんを心ゆくまで鑑賞し弄りつくしたと思います。