誕生日パーティー

 そのレストランはブラウンとゴールドの内装がシックだが華やかさのある高級店だった。オレンジがかった照明に煌めく銀食器が美しく、抑えた音量のクラッシック音楽が立ち込めるように奏でられ耳に心地よい。
 MGNの部長に就任していた頃、ここと似たような高級な飲食店に行くことが何度もあった。だが、あの頃の俺にはどの店も高級感など欠片もない俗っぽく薄汚れた店に見えた。出される食事は金さえ出せば誰でも味わえる『贅沢』の味で旨いも不味いもない。胸が悪くなるだけだった。
 それがどうだろう。眼の前に御堂がいる。それだけでレストランは美しく食事は極上の味わいだ。この幸福感溢れる贅沢は金では買えない。
 9月29日、その日俺は泣きたくなる程の幸せがあるのだということを再認識しながら、最上級のレストランで御堂の誕生日を祝っていた。

 サプライズのバースデープレートを御堂が味わい終えると俺は用意していたプレゼントを渡した。
「ありがとう、佐伯。しかし……私には少し派手だな」
 御堂はプレゼントを開けて目を見張り、俯いて頬を染めしばらく躊躇ってから、つんとすました口調でそう告げた。
「あなたに似合わないものなどこの世にはありませんよ」
「君は……またそんなことを」
「御堂さん、今、ここでそれをつけてください」
「え……ああ。わかった」
「では、俺が」
 渡したプレゼントごと御堂の手を取ると俺は立ち上がった。俺に手を引かれ御堂も立ち上がる。俺はゆっくりとテーブルに沿って歩き御堂の前まで行くと自分に向かわせて、椅子に掛けさせた。
「佐伯……?」
 御堂の手を取ったまま跪き、顔を上げ微笑む。途端に御堂は真っ赤になった。
「さえ……き」
 御堂の反応を楽しみながら俺はカフスボタンとタイピンを付け替えていった。御堂は頬を染めて息を弾ませている。瞳が悪戯っぽく光っているのはかしずく俺を堪能しているからだろう。
 自尊心を刺激され素直に反応する姿が堪らなく可愛らしくて、愛おしく、困ったことに俺の嗜虐心をもくすぐる。
「とてもよくお似合いですよ、姫君」
「だ、誰が姫だ!いい加減にしたまえ!」
 立ち上がって頬にキスをしようとした俺を振り払い、軽く叩きながら御堂が睨みつけた。俺が噴き出すと御堂もつられて笑う。
「お誕生日おめでとうございます、御堂さん」
「何度いえば気が済むんだ。もう何度目だと思っている」
「何度でも」
「一度にたくさん年を取った気がするぞ」
「まさか」
 両手を腰に回して抱き寄せると胸に手をついて距離を取ろうとするが、本気で嫌がってはいない笑顔が間近にあった。
「誕生日おめでとう、御堂」
 俺はもう一度そう言うと御堂の柔らかな唇にキスを落とした。

御堂さんお誕生日おめでとうございます!御堂さんと佐伯の幸せなひと時を書きました(*´▽`*)
御堂さんの手を取ってかしずく佐伯とちょっといい気分になってる御堂さんです。
ああぁ御堂さん可愛いなぁ……♡