カウントダウン

 私は身動ぎもせず息を詰めて佐伯を見つめていた。
 光量を落とした寝室のベッドの上、佐伯もまた私の身体の横に両手を付いたまま、彫像のように動かなかった。その青い瞳がじっと見つめているのは私ではなく、私の頭の横にあるサイドテーブルの上の置時計だ。見上げる佐伯の顔は端正で、若く引き締まった裸体は逆光に縁取られ、深い陰影を刻んでいた。下腹部に触れる佐伯の熱く湿った半勃ちのペニスの感触が私の官能を煽る。
「もう少しだから、我慢してください」
 思わず漏れたため息に佐伯は視線を動かさないまま苦笑しながら囁いた。
「佐伯……」
 唐突に私は佐伯が私を見ないことに不満を感じる。両手を伸ばして佐伯を抱きしめたら置時計から視線を外して私を見つめるだろうか。
「たったの1分ですよ。我慢出来ないなんて困った人だな。ほら、もう……時計の針が重なる」
 言われて時計を見ようと頭を動かしたが、見えなかった。短針と長針と秒針の三つの針が重なって、また離れていく様が佐伯の瞳の中に見えるかも知れないと覗き込んだが、薄闇に深い藍の色を湛える瞳には何も見えない。
「……御堂さん、お誕生日おめでとうございます」
 佐伯が私と眼を合わせて微笑んだ。私はゆっくりと手を伸ばして佐伯の頭を抱き抱える。
「……ありがとう」
「お祝いに色々と用意してますが、まずひとつめのプレゼントは俺ですね」
 優しく胸を撫でられて腰が揺れた。そのままペニスを佐伯の腹に擦り付けながら腕に力を込める。
「佐伯、早く……お前が欲しい……」
「ええ、たっぷりと味わってください」
 私の熱い吐息を飲み込む佐伯の深い口付けに答えるように舌を絡めながら、今夜はいつもより乱れてしまうかも知れないと思った。

御堂孝典生誕祭2015年の記念SSふたつめです。
焦れて佐伯を求める御堂さん可愛い!と思いました。あと『プレゼントは俺』とかよくあるネタですが、大好きなので佐伯に言わせてしまいました。