リゾートホテル

「ありがとう、佐伯」

 鮮やかな花の散らばるベッドの中。裸体にシーツを纏った御堂がワイングラスを掲げ艶やかに微笑む。俺が贈った凝った意匠のイヤーカフを煌めかせた今日の御堂は絵画の中の淫靡で気怠げなオダリスクのようだった。いつもにも増して美しい。

 高級リゾートホテルのオーシャンフロントスィート。

 持参したカラオケマイクの伴奏で高らかに御堂のためのバースデーソングを1曲歌い終えた俺は窓の外に広がる真昼の常夏の海を背景にキザなポーズを決めていた。オリエンタルな雰囲気の御堂と異なり、俺は派手なアロハシャツにハーフパンツとサンダルにカンカン帽、首にはレイまでかけたリゾート気分満載のファッションだった。

 ふたり揃っての海外出張、仕事を終えた翌日が御堂の誕生日になるように調整して正解だった。
 昨日、予定通り宿泊先をこのゴージャスなホテルに変えた。
 食事を楽しんだあと、ゆったりとバーで過ごし、真夜中になってから俺は誕生日プレゼントのプラチナのイヤーカフを御堂に渡した。そして、それを付けた御堂と淫らで濃厚な夜を過ごした。明けて今、ブランチを終え、ふたりっきりのバースデーパーティーを始めた俺をしどけない格好のまま見つめる御堂は南国に当てられたのか、少し開放的になってるようだった。機嫌もすこぶるいい。

 2曲目を歌い終えた俺は御堂の拍手にお辞儀をしながら、問いかけた。
「御堂さん、次はデュエットしませんか?」
 下手だからとカラオケで歌ったことのない御堂に俺はペアマイクを差し出す。開放的になってる今なら歌ってくれるかも知れない。御堂の歌が俺は聴きたかった。
「それより、もう1曲聴かせてくれ。君の歌はとても素敵だ」
 ほんのり頬を染めてツンと顎を上げ、小首を傾げる。甘えを含んでいながら睨みつけるような傲慢な視線に俺の股間は熱くなった。ゾクゾクする。御堂の醸し出すプライドの高さを感じさせるエロチシズムに逆らえる者はいないだろう。
 俺はリクエストに答えて、御堂のためのラブソングを高らかに歌い上げた。

 御堂の拍手が心地良い。

「御堂さん、次こそデュエットを……」
「次は私の大好きな曲を歌ってくれ」
「もちろんです。でも、その前にせっかくだからデュエットしましょう」
 俺はベッドに乗り上げ、マイクを御堂の口許によせた。
 御堂が濡れた赤い舌を出してマイクを舐めるふりをする。自分のその仕草に感じたのだろう。御堂は情欲に潤んでキラキラと光る瞳で俺を見上げ膝をこすり合わせて、甘い吐息を漏らした。
「……どうせ握るなら、私はマイクより君のココがいい」
 ハーフパンツの上からゆっくりと股間を撫で擦られる。
「積極的ですね」
「誕生日だからな。もっとアレがしたい」
 形を確かめるように揉まれて思わず唸った。
 御堂にとってカラオケはセックスのおねだりよりも恥ずかしいのかも知れない。
「佐伯、キス」
「仰せのままに」
 唇を重ね、俺は御堂の咥内に舌を挿し込んで絡めた。

 ワインの味のする御堂の舌は溶けるように柔らかく甘く燃えるように熱かった。

御堂孝典生誕祭2016年の記念SSふたつめです。
リゾート気分満載の佐伯と御堂さんです。佐伯の中の人、歌がすごく上手ですよね!御堂さんの中の人も歌声が可愛い感じでとてもいいです。メガミドのふたりが歌うキャラソンCDが欲しいです!